2013年6月23日日曜日

@ノ” 「でんでんむしのかなしみ」

今年は雨空に咲く紫陽花がとりわけ美しく感じられました
そこで、本日はでんでんむしの童話をご紹介します 。。。。@ノ¨


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「でんでんむしのかなしみ」  新美南吉
いっぴきの でんでんむしが ありました。
ある ひ その でんでんむしは たいへんな ことに きが つきました。 
「わたしは いままで うっかりして いたけれど、わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるでは ないか」
この かなしみは どう したら よいでしょう。 
でんでんむしは おともだちの でんでんむしの ところに やって いきました。 
「わたしは もう いきて いられません」 と その でんでんむしは おともだちに いいました。 
「なんですか」 と おともだちの でんでんむしは ききました。 
 「わたしは なんと いう ふしあわせな ものでしょう。わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるのです」 と はじめの でんでんむしが はなしました。 
すると おともだちの でんでんむしは いいました。
 「あなたばかりでは ありません。わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」 
それじゃ しかたないと おもって、はじめの でんでんむしは、べつの おともだちの ところへ いきました。 
すると その おともだちも いいました。
 「あなたばかりじゃ ありません。わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」 
そこで、はじめの でんでんむしは また べつの おともだちの ところへ いきました。 
こうして、おともだちを じゅんじゅんに たずねて いきましたが、どの ともだちも おなじ ことを いうので ありました。 
とうとう はじめの でんでんむしは きが つきました。 
「かなしみは だれでも もって いるのだ。わたしばかりでは ないのだ。わたしは わたしの かなしみを こらえて いかなきゃ ならない」 
そして、この でんでんむしは もう、なげくのを やめたので あります。

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新美南吉(1913-43)さんといえば、国語の教科書にも載っていた「手ぶくろを買いに」「ごんぎつね」が有名ですよね。(今年は生誕百周年!)

こちらの「でんでんむしのかなしみ」は美智子皇后さまが子どもの頃、ご家族に読んでもらった童話として話題になりました。
インドで開かれた国際児童図書評議会世界大会(1998年)の講演では、「何度となく、思いがけない時に私の記憶によみがえってきました」 とお話しされています。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/ibby/koen-h10sk-newdelhi.html

たったこれだけの短いストーリー。。。
とはいえ、一度読めば困難に直面した時の心の持ちようが
大きく変わってくるような作品ではないでしょうか。

大人はもちろんのこと、幼児~大学生まで、これから社会に羽ばたく若者のみなさんにぜひ読んでいただきたいお話です(^_^)/

『でんでんむしのかなしみ』 
(新美南吉/作 井上ゆかり/絵、にっけん教育出版社、2005年)

↑他にも何冊か絵本が出ているのですが、こちらに収載されているもう一つの童話、「きょねんの木」も心あたたまる内容です。

2 件のコメント:

  1. かなしみを知っているからこそ、誰かに優しくなれる。
    かなしみを知っているからこそ、またひとつ強くなれる。
    かなしみを知っているからこそ、今の自分がいるんだな〜っと感じました。

    いつも考えさせてもらっています☆
    なんさん、ありがとう。

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    1. かなしみを知っているからこそ、そういう風に感じられる美ら月さん☽
      ほんとうに素敵です(*^_^*)
      かなしみを乗り越えた人は内側からキラキラしたものを放っているように見えます✧ 
      こちらこそありがとうございます!

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